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舞台

 LifeRが第一作目として提示するのは「自殺と自決」である。

 もともと意味も意義も同じであるはずの両者だが、歴史的な背景からか国民性か、受ける感覚は大きく違う。時代劇の影響もあってか自決は「悲愴な、逃げとしての」自殺と区別され、さらに自爆テロなど同じような行為よりも「潔い・至高」といったイメージが朧気にでも浮かんでくる。「STOP自殺」を説いている学校の先生であっても、煌めきながら殉ずる若き特攻隊の映画を見れば無条件に感動するものである。

 現代、戦死に本気で憧れる若者が多いと聞く。

 たとえ事実の戦争がただの地獄だったとしても、私達が今目にする太平洋戦争は限られた時間に青春を燃す映画であったり命のドラマであったりするもので、もはや「戦争を描く」という大義名分を得て、そうやって泣きたい若者をターゲットにしたエンタテイメントにすら見える。運命と可能性が開け過ぎてどちらを向いて良いのかサッパリな人間には、やはり「抗えない運命の中で懸命に生きようとする」構図は格好いいのだろうが、「生きていればよいこともある」と信じて疑ったことのない人にとってそういう気持ちは理解しがたいものだろうとも思う。

 自殺はその経過や環境から「孤独ゆえに生じる病」と言われるが、これを「孤立した価値観ゆえに生じる病」とするなら、そうした別の価値観があると気付くことで少なくとも無為な自殺は止められるのではないかと思う。

粗筋

 ライターが訪れたのを察して男が起きる。男は自らを「自決をコーディネートする者」と称し、またその罪でそこに閉じこめられているとも語った。男は男なりの態度でライターをもてなし、あらためて『跡』と名乗ったうえで自らが扱った三件の『自決』について語り始めた。

─村上祐介 享年16歳 両親及び両祖父母が存命 趣味無シ 自決志望動機、高校一年時より虐めを受ける 報酬無シ

 ライターは『跡』を不快な話者と思った。

─江田昌弘 享年29歳 両親が存命 趣味マラソン 自決志望動機、無シ

 ライターは『跡』のちぐはぐさに困惑した。

─大村浩二 享年42歳 妻と娘が存命 趣味絵画 自決志望動機、家族、否、不倫

 ライターは『跡』がそこに居るのかどうか分からなくなった。

 ライターはようやく、そこがどこなのか分からないことに気づいた。

─田島裕也 自決志望動機、自殺

 田島?・・・・・・田島って、誰だ。

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