Stg:1 或る一篇の諦念

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作品紹介

Stg:1 或る一篇の諦念

それができないなら、安易に私を知ろうとしないでください。

私の顔を見たがったり、私のやったことをつかの間の話題にしたりしないでください。

これは私という犯罪を知るにあたってあなた方に課せられる義務。

昨年のStg:0『壺毒の病』にてか弱い産声を上げたLifeRが、言い訳ではなく心意気の問題として「真の第一回」とする今回。

独り芝居から「四名+一個+謎の一名」の対話へと成長し、果てはドラマへと成長するかもしれない様をご覧いただけるかもしれない本当のStg:1を披露いたします。

synopsis

2008年──かねてより提唱していた「零距離構想」が現実のものとなったとして、政府は首都機能を五つの第二首都に分散させる「第二首都計画」に着手。ところがこれに関わる政治家が次々と殺害される事件が起こる。

ネオアイドルSADAKOが絞殺される。容疑者として浮上した男、佐藤はある目的のために、マネージャーでありまた母親であった砦真理に接近する。

90年代、長官狙撃事件から立て続けにスクープを重ね「鷹」と呼ばれた男。宮津孝弘は最後の仕事として首都移転に関わるクーデター計画に焦点を合わせる。

鷹のもとで、三重県遷都を主導していた隈田の秘書である「三雲」の身辺を洗っていたライター。跡部圭司は雨に濡れる一体の人形を拾得する。人形は自らをと名乗る・・・・・・

background

現代の情報網の中では、一人の人間がそこから意義のあるものを拾い出して自分の糧とするのは至難の業と言える。

そもそも、あふれる情報の中から私達がそれを的確に知り、捉えることができるように取捨選択しコメントを付与するのがいわゆる『報道』という職業と考えるが、実際のところそのあまりの量とスピードに現代では(プロであるはずの)彼らの許容範囲をも越えてしまい、果てはバイト君まで動員されてよく解らない内に安易なコメントが付けられて情報は右から左へと垂れ流されてゆく始末。そして私達は「安易なコメント」を安易に信じ、たとえば同じ出来事であったとしても、報道された段階で「悪」とコメントが付けばそれは責められるべき悪行となり、また「善」となれば同情すべき犯罪へと簡単に豹変したりするのである。情報を自分の糧とするどころか真偽を確かめる暇もなく、私達は情報の津波に飲み込まれるばかりである。

ただ、この『敗北』は意識さえしなければ、少なくとも普通に生きてゆく上では特に問題はない。前述の通り情報が「安易なフィルター」を通して報道されてゆくとしても、それはあくまで「社会で大体一般的と思われている常識」に基づくものなので、そこを疑ってかからない限りそれは別に普通なのである。

では「安易なフィルター」を飲み込めないとどうなるのか。情報に妥協できない者はどうなるのか。本作ではそんな人間の破壊的な諦念をお見せできればと思っている。

宮本 荊

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